はじめに
消費者庁は20日、株式会社「トラスト」に対し、販売する下着類が景表法に違反するとして措置命令を出していたことがわかりました。合理的な根拠資料の提出はなかったとのことです。今回は優良誤認などの疑いが生じた場合に求められる資料について見ていきます。
事案の概要
消費者庁の発表などによりますと、トラストは「ヴィーナスカーブ」「ヴィーナスウォーク」と称するガードルとソックスを販売するに際し、ウェブサイト上に「履くだけでダイエット」「2週間で10センチ?!」などと表示していたとされます。これらの製品について昨年5月以降全国の消費生活センターに「効果がない」「返品できない」といった苦情がおよそ300件よせられていたとのことです。消費者庁は同社に対し表示の裏付けとなる資料の提出を求めていました。
優良誤認表示とは
景表法5条1号によりますと、「一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示」し「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれ」のある表示を優良誤認表示と言います。「1週間で◯Kg痩せる」「1ヶ月で身長◯センチ伸びる」といった表示が典型例と言えます。違反した場合には消費者庁により差し止めや再発防止などを求める措置命令が出され(7条1項)、場合によっては課徴金納付命令が出されることも有りえます(8条)。
優良誤認表示の判断基準
消費者庁のガイドラインによりますと、「著しく優良であると示す」表示に当たるかどうかは表示上の特定の文章や絵、写真だけで判断するのではなく、それらも含めた表示内容全体から「一般消費者が受ける印象・認識」を基準として判断するとしています。消費者庁が優良誤認に該当するとして措置命令を出す際には消費者庁が実際のものと異なる表示であることを立証する必要がありますが、事業者に一定の期間を定めて表示の裏付けとなる根拠を示す資料の提出を求め、その提出ない場合には立証するまでもなく優良誤認として措置命令が出せるとされております(7条2項)。
提出が求められる合理的な資料とは
それでは消費者庁により求められる表示を裏付ける合理的な資料とはどのようなものでしょうか。ガイドラインでは①客観的に実証された内容のものであり、②表示された効果と実証された内容が適切に対応している必要があるとしています。また「客観的に実証された」とは試験・調査によって得られた結果である場合、または専門家や専門機関の見解または学術文献によって証明されたものである必要があるとしています。たとえばJIS規格の試験や法令に基づく検査機関による検査、中立的な公的研究機関による検査が該当します。消費者の体験談などの場合は無作為に抽出されるなど統計的な客観性が必要とされます。
コメント
本件でトラストは消費者庁の求めに対し表示を裏付ける合理的な根拠を示す資料の提出はできなかったとされます。また「※効果の感じ方には個人差があります」といった表示もされていましたが、消費者庁はこれによって一般消費者が認識を打ち消すものではないとしました。以上のように優良誤認表示の疑いが生じた場合に消費者庁から求められる裏付け資料はかなり厳格なものとなっております。公正中立な研究機関による検査や客観的な試験といったものでなければ認められる可能性は低いと考えられます。近年ウェブサイト上ではかなり誇張された表示が散見されますが、ほとんどの場合は消費者庁が認める資料は提出できないものと思われます。製品表示を考える際には合理的な根拠を提出できるかを常に念頭に置いて検討することが重要と言えるでしょう。
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